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■税務調査官は何をチェックするのか?
⑦相続財産の現状
調査官は、相続人それぞれがもらった財産について、現在どうなっているかを確認して、申告通りになっているかも調査します。
相続した不動産や預金の名義が、実際にその人のものになっているか、故人の生命保険金を申告通りに受け取っているかどうかも焦点になります。
まれに、母親の相続財産として申告したものが、子どもの名義になっているということがあるのです。
これは、母親からの贈与ということになってしまい、贈与税の問題が生じてしまいます。
みなさんの財産が申告した通りになっているかどうか、確認しておいてください。調査官も必ずチェックします。
⑧相続税の納付方法について
相続税は、各人が自分の税金を自分のお金で納めなければなりません。
ところが、実際には、一番相続分の多かった母親が、子どもたちの分をまとめて払っているということもままあります。
贈与税の控除額の110万円以下なら問題ありませんが、これを上回る金額だと贈与税がかかってしまいます。
この点を指摘されたら、「子どもたちは一時的に立て替えて払ってもらっただけで、後からきちんと返す意思がある」ということを説明しなければなりません。
うっかり「私(母親)が全部払いました」とか「母親が全額払ってくれました」といってしまうと、母親からの贈与ということになり、贈与税の対象となってしまいます。
⑨名義株の有無
亡くなった人が、同族会社の経営者だった場合、まず疑われるのが「名義株があるのではないか」ということです。
家族や親戚、従業員が株主になっている場合、その人たちが本当に出資しているかどうかが問題になります。
たまに、家族や従業員の名義の株式があるけれども、出資の事実が認められないこともあるのです。
また、昔は株式会社を興すのに、発起人が7人必要な時代がありました。
この時、名義だけを借りて、実際に出資したのは亡くなった人だけというケースもまれに見られます。
この人たちは、表面的には、株主ということになってはいます。
しかし、実質的には出資者ではなく、名義上の株主なだけです。
ちゃんと、その分「名義株」を相続財産として申告しなければなりません。
調査官は、家族や従業員に株式が渡った経緯や、本当に出資しているか、配当もきちんとその人たちに渡っているかどうかを聞いてきます。
事前に、議事録や契約書などをそろえておき、これらのことを説明できるようにしておくことが必要になります。
⑩同族会社との債権債務
亡くなった人が会社の経営者だった場合に必ず問われるのが「会社に個人的なお金を貸したままになっていませんか?」ということです。
会社が、資金繰りに困り、自分の預貯金から工面するのはよくあることです。
経営者が会社へ貸したお金は、法人税の確定申告書において毎期その状況(決算報告書の付属明細書)を税務署へ報告しています。
万一、亡くなった人が会社へ貸しているお金があり、それを残したまま相続を迎えてしまった場合には、貸付債権として相続財産になってしまいます。
というのも、会社に対して貸付金がある状態で相続が起こると、相続人は返してもらう権利を引き継ぐことになるからです。
これは本来であれば、生前に解決しておくべき問題です。
経営者本人の個人的な財産から借り入れをするということは、実際に会社の経営状態は苦しいわけですから、後から返済しようにもなかなかできるものではありません。
そのような場合には、生前に、会社に対する貸付金を債権放棄しておくのが効果的です。
そうすることで、会社のほうでは債務免除益になるので、決算で雑収入として組み込まれ、その分の経営者からの借金は消滅します。
会社が赤字の状態の場合、このように雑収入で受け入れても赤字の範囲内であれば税金はかからず、相続財産も減らすことが可能となります。
この方法を実践する場合には、債権放棄の通知書を作成して会社へ通知し、会社では帳簿を通して債務を消滅し、決算に反映させます。
債権放棄の通知書には、自筆で名前を書いてもらい、実印を押し、公証役場で確定日付を取っておきます。
金額が何百万円、何千万円であっても、このようなきちんとした段取りを踏んでおけば、税務署のほうは文句のつけようがありません。
これは、相続財産を減らして節税にもつながるため、大変有効な手段です。
ただし、債権放棄する金額によっては、会社の株価に影響をおよぼすこともありますので、実行する場合には、その点を注意してください。
クエスト不動産経営管理(株) 石光良次