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事業的規模について

2019/09/18

不動産投資の目安である事業的規模の「5棟10室基準」って、どんな基準なのか解説いたします。


今の世の中、不動産投資をされている方も少なくないです。

年金制度の将来像への不安(長寿高齢化や少子化が進展)から私的年金代わりに、との考えもあるでしょう。

そして「働き方改革」などでサラリーマンが、以前よりも副業しやすくなっている状況が後押ししているようにも思えます。

その投資対象は、ワンルームマンション1室から、戸建1棟、ビル・マンション・アパート丸ごと1棟、はたまた駐車場まで、規模も形態も様々です。



これらの不動産を貸し付けて得た収入は不動産所得となりますが、所有する不動産のボリュームが基準を超えると、「事業的規模」であるとされます。

所得税基本通達では「社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべき」と実態に基づくとしながらも、形式基準として次を示しています。


(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。


(1)はアパートやマンション、(2)は戸建ですが、その数から「5棟10室基準」と言われています。ちなみに、複合形態の場合は、次のとおり換算します。

 ・戸建1棟は、アパート・マンション2室
 ・駐車場は、5区画でアパート・マンション1室
 ・共有の場合は、持分換算せずに全体で判断



なお、不動産所得が多額(1室の賃料が高額)だったり、主に不動産収入で生活しているなどの実態がある時には、「5棟10室」以下でも「事業的」と認定される場合もあるようです。


では、事業的規模になると、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

事業的規模になったことそれ自体が形式要件となって、例えば所得税(国税)の税率が高くなるといったわけではありませんが、次のようなメリット・デメリットがあります。


【メリット】
●青色特別申告控除
・・・一定の要件を満たせば、最高で65万円の特別控除が得られる
●事業専従者給与、事業専従者控除
・・・青色申告の青色事業専従者給与または、白色申告の専従者控除の適用を受けられる。
●取壊し、除却などの資産損失
・・・損失の全額が必要経費に算入でき、その時の所得から引ききれない場合には3年の繰越しが可能


【デメリット】
●所得税、住民税
・・・所得が増えた場合、税額が増える
●個人事業税
・・・事業規模が増えて所得が多くなった場合、青色申告特別控除前の所得から290万円を差引いた金額に対して5%が課税されることもある。



「サラリーマン大家さん」が投資額を大きく増やして、数十の室数、数億円を超える規模の不動産を所有している、というような話を耳にすることもあります。

こうした事例は、もちろん「事業的規模」として営まれていると思われ、本業(会社員)を超える所得を得ているものと推察されます。


そうなると、副業のつもりでいた不動産投資でも、【どこまでが副業で、どこからが本業なのか】といったことが気になるところです。

これに関して、気になる新聞報道を目にいたしました。

・〇〇市の職員が懲戒処分を受けた。
・処分理由は、平成20年に無許可で〇〇市内にアパート3棟を購入して、年間600~700万円の家賃収入を得たこと。
 ・さらに平成28年3月には母親を代表とするアパート経営のための法人を設立し、職員が実質的に経営していた。

人事院規則では、国家公務員が営利企業の役員になったり、自ら営利企業を営む(自営)ことを原則禁止し、一定の条件を満たして上司(任命権者)が許可した場合は例外的に認めるという建付けにしています。

地方公務員でもこの規定が準用されるケースが多いでしょう。

不動産事業について見ると、「5棟10室基準」のほかに「駐車場は10台以上または機械設備設置」「年額収入500万円以上」などが、「自営」に該当します。

該当する場合には、自ら経営に関与(法人設立など)しないことや、賃貸管理会社に委託(アウトソーシング)するなどの措置を取らないと、許可されないことになっているのが現状のようです。



「働き方改革」、そして70歳まで働ける社会を目指す流れなどによって、会社員の副業のイメージが以前よりもポジティブになり、副業をしやすくなっているのは確かだと思います。

しかしながら、公務員ではこのような制約が未だに存在し、民間の会社員でも会社の就業規則などで、類似の制約があるケースも想定されます。

不動産投資では、事業規模を拡大・伸長していく際の“マイルストーン”のひとつに「5棟10室」が位置付けられる場合もあるようです。


それを達成することによるメリットとデメリットは、あらかじめ入念に比較して、吟味しておくべきでしょう。



クエスト不動産経営管理(株) 石光良次


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