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地主さんであっても破綻寸前の場合も

2019/05/21

不動産投資をすると、地主さんであっても、とんでもない事態に陥る場合もあります。

結構な割合で、破綻寸前になって、ひっそりとマンションやアパートを売却されてしまう場合もあります。


地主さんの場合、そこに持っている土地があるから、建物を建てることが多いです。

土地の取得費用もかなり安い場合が多いのですが、何故そんなことになるのでしょうか。


地主さんの相続対策では、土地の有効活用、つまり「不動産投資」が推奨されています。

しかし、ハウスメーカーや建築会社の作成する事業計画書を鵜呑みにした結果、大損してしまうケースも多いです。


賃貸マンションやアパートの建築費用を「相見積り」しても、品質に大差が無い場合も多いです。

高い資産価値を維持できると不必要に豪華にしても、収支が合わなければ意味がないのです。

デッド・クロスを超えて維持することができない賃貸マンションやアパートが山のようにあります。


地主さんにとっての相続税対策の基本は、土地の有効活用である不動産投資です。

預金や上場株式など金融資産の場合は、その額面や取引価額の100%が相続税評価となります。

しかし、不動産の場合は、その相続税評価を取引価額よりも低く抑えることができます。

相続財産の評価を引き下げることができるため、相続税負担を軽減させることができます。



土地を評価する方法は、何個もありますが、代表的なものに「公示価格」「路線価」「固定資産税評価額」があります。

「公示価格」は、法人税や所得税法の時価となります。

「路線価」は、相続税法の時価(相続税評価額)となります。(公示価格の8割が目安)

「固定資産税評価額」は、固定資産税等の評価額となります。(公示価格の7割が目安)

土地の相続税対策を考える場合は、その路線価に基づく相続税評価額を引き下げることが基本となります。



地積規模の大きな宅地、不整形地や無道路地などの特殊な状態にある土地は、画地補正や不動産鑑定評価を行うことによって、評価を引下げることも可能です。

これは、特別な相続税対策というよりも、土地評価の方法を知っているかどうかによって決まります。

また、土地の所有者と建物の所有者および使用者との関係に応じて、自用地、貸宅地、貸家建付地、借地権の4つに区分することができます。

それぞれの所有形態と使用状況で、土地の評価が違ってくるのです。



路線価による土地の評価額 1億円

借地権割合70%、借家権割合30%、賃貸割合100%

評価の計算をする場合、路線価方式(または倍率方式)で自用地の評価を行い、次に利用状況による修正を行います。

自用地とは、被相続人が所有、本人居住、事業を営む、子供に無償貸与していたような土地で、自由に利用することができる土地のことをいいます。

他人が利用する権利が発生していないため、100%で評価することになります。

一方、貸家の敷地に供されている土地を貸家建付地と言います。

この場合、土地は貸していませんが、自ら所有する建物を貸している状態です。

しかし、貸家には入居者がいるため、その土地を自由に処分することができません。

この場合は、入居者の権利を差し引くことになります。


自用地評価 ×(1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)


したがって、自用地の評価額が 1億円の土地に賃貸アパートを建てると、その評価額は、


1億円×(1-70%×30%×100%)= 7,900万円


▲21%となり、評価が入居者に帰属する権利として減額されるのです。


借地権割合は地域によって異なりますが、60%~70%となっているところが多いようです。

また、借家権割合は、ほぼ全国一律で30%となっています。

その結果、賃貸アパートやマンションが建ててある貸家建付地の評価は、自用地の評価の80%程度となります。

賃貸アパートを建てるだけで、2割下がるのです。

これに加えて、「小規模宅地の特例」を適用できると、200㎡の限度面積まで、さらに▲50%評価が下がりました。

結果として、2割引の半額で、4割まで評価が引下げられたのです。



しかし、不動産投資は、価値が低下するリスクを伴います。

価値の低下とは、家賃収入の減少による収益性の低下です。

人口減少が深刻化する現在、賃貸アパートの家賃収入は、相当条件の良い立地でなければ維持することは困難です。

将来的に安定した収益を期待することは、言われるほど容易ではないのです。


地主さんは、先祖伝来の土地を次世代に引き継がせることばかりに関心が向かい、賃貸経営から収益を得るという基本的な論点には関心が無い場合もあります。

ハウスメーカーや建築会社からの提案された「事業計画書(収支計画・損益計画)」を信じていれば、収益性など計算する必要はないと思っていたかもしれません。

しかし、ハウスメーカーが作成する事業計画書のほとんどは、夢のようなバラ色の将来予測に基づいているのです。

実際には、ほとんどが実現不可能な事業計画なのです。


「家賃額」が将来も同額を維持することができる将来の予測、「空室率」がそれほど上昇しないとする将来の予測は、ほとんどが実現することは不可能です。

実際、将来の家賃は下げざるを得ませんし、空室率も上昇するはずです。

また、修繕費も当初の想定以上に大きな金額となることが一般的です。

また、建築費用についても、ハウスメーカーや建築会社によって数億円や倍などの差が出ます。


大手ハウスメーカーや建築会社は、「うちの建てるマンションは、圧倒的に高品質で、他社のものよりも資産価値が高いのです」と言ってきます。

もちろん、30年~50年間といった長期であれば、高品質の建物のほうが、耐震性に優れていたり、修繕費が節約されたりするかもしれません。


しかし、賃貸経営を考える場合、建築費用の高いマンションの家賃が、建築費用の安いマンションの家賃よりもすごく高いということはありません。

家賃を多少は高く設定できるかもしれませんが、本当にわずかな差にしかなりません。


残念ながら、賃貸マンションの入居者は、その建物の品質や性能を理解した上で、それに見合うような高い家賃を支払おうとはしないのです。

同じ地域、同じ間取り、同じ床面積、同じ築年数であれば、少しでも家賃の安い物件を借りたいと思うのです。

結果として、高品質の建物であろうと、低品質の建物であろうと、同じ条件の賃貸物件の家賃は、ほとんど同じ金額となります。


実際のところ、大手ハウスメーカーであっても、中堅ハウスメーカーであっても、外注している下請け業者(工事現場の大工さん)は同じケースがあります。

見えないところに使っている材料もほとんど同じです。

結局のところ、大手ハウスメーカーは、建築費用を高くできた分だけ、利益を獲得しているのです。

このことから、建築費用が高いマンションを建てるということは、それだけ賃貸経営の収益性を下げることになります。


アパートやマンションを立てれば、放っておいても賃貸経営が成り立つと安易に考えるのは大きな間違いです。

アパートやマンションを建てる際の建築費用、借入金利息や家賃収入といった賃貸経営そのものを、慎重に検討しなければいけません。

この賃貸経営に失敗してしまうと、取り返しがつきません。

賃貸経営を止めて、その不動産を現金化しようと思っても、買主が見つからず困ることになるのです。


これでキャッシュ・フローが赤字になれば、手元現金が流出する最悪の事態となります。

返済比率が高すぎる場合、ローンを払えなくなり、すぐにキャッシュアウトをしてしまうことにもなるのです。

そもそも、土地の有効活用は、相続税対策である一方で、建物という固定資産への「投資」です。

そのため、収益性の観点から、賃貸マンション・アパートの建築という投資を実行すべきものです。


建物を建てたことによって、どれだけの収益を生み出すことができるか、その投資回収計算を行わなければならないのです。

投資の収益性は、【 利益 ÷ 投資額 】です。

収益性の最大化を図ることが、賃貸経営なのです。

利益が小さすぎてもダメで、投資額が大きすぎてもダメなのです。

 不動産投資の収益性 = 利益/投資額

しかし、従来の相続税対策では、とにかく売りたいハウスメーカーからの提案、とにかく貸したい金融機関からの提案に従って、収益性を無視して必要以上に豪華なマンションを建築するケースが多いです。

結果として賃貸経営の収益性が低下し、最悪の場合、財産を失ってしまう悲惨なケースも出ています。

安易な相続税対策により、取り返しがつかない失敗をもたらすことになるのです。


地主さんが土地の有効活用を行う際には、不動産投資の収益性や安全性を慎重に計算しなければいけません。

絶対にハウスメーカーの事業計画書を信用してはいけないのです。

相続税対策を行うのであれば、それが不動産投資であることを認識し、正しい収益性を計算しましょう。



クエスト不動産経営管理(株) 石光良次


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