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新型コロナウイルス感染症に対するアビガン承認に向けて 4-3(白木公康さん)

2020/11/25

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 -日本医事新報社- 2020年10月27日記事

『緊急寄稿(4)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアビガン承認に向けて(白木公康) 』


https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15763   >



3. 帯状疱疹からCOVID-19肺炎の病態を理解する

インフルエンザウイルス,水痘帯状疱疹ウイルス,単純ヘルペスウイルスなど急性ウイルス感染症を起こすウイルスに感染すると,感染細胞は細胞培養では死滅するが,生体内では死滅せず,ウイルス核酸や蛋白を発現しながら,見掛け上正常な細胞に変化していく。たとえば麻疹の感染細胞は抗体の存在により,抗原発現を停止して正常細胞化するが,抗体を抜くと再びウイルス抗原が発現してくる6)。私たちは水痘帯状疱疹ウイルス感染細胞が中和抗体の処理により,後根神経節に潜伏感染した神経細胞の抗原発現に限定され,ウイルス蛋白発現を失って,見掛け上,正常細胞になることを報告した7)。このように抗体が感染細胞の性状を変化させる現象は“抗原変調”として知られている。単純ヘルペスウイルスは,皮膚病変の回復後にその部位に多形滲出性紅斑を発症させることがあるが,その皮膚には単純ヘルペスウイルスのDNAが検出される8)。生体内では感染細胞の集団は死滅せず,感染が終息しても見かけ上正常細胞として生き続ける。つまり,単純ヘルペスウイルス感染細胞の死滅によって皮膚欠損を生じるのではない。水痘や帯状疱疹でも,強い炎症を伴わない限り,ウイルス感染細胞の死滅によって皮膚欠損や瘢痕形成が生じることはない。

COVID-19肺炎は,SARS-CoV-2感染細胞に強い炎症所見を示し,回復後に組織構築はほぼ保たれているものの,強い炎症に伴う線維化や瘢痕化という後遺症を残すことがある。また,SARS-CoV-2は,約6時間で,1サイクルの増殖を終えて感染が広がるが,ここで感染細胞は死滅せずに,後述する帯状疱疹のように,細胞性免疫応答によって,最終的に正常細胞化すると思われる。感染細胞がウイルス抗原の発現を続けるため,細胞性免疫応答による炎症と,さらにRNAウイルスとしてToll様受容体を介してサイトカインを産生して生じる炎症が長期に続く。こうしてCOVID-19肺炎が発症する。

私は日本医事新報No.5006(2020年4月4日号)に,ウイルス感染症は大きく2つ(インフルエンザ型と水痘型)に分かれ,抗ウイルス薬による効果は異なることを記載した。このうちインフルエンザは,上気道に感染して上気道でサイトカインが産生されて症状を呈する。抗ウイルス薬を投与するとウイルス感染は拡大しないが,既に感染して,ウイルスRNA合成を終えた細胞は残存し,サイトカイン放出が減少する1~2日後までインフルエンザ症状が残り,ウイルスも検出される。

一方,水痘は潜伏期が約2週間で,ウイルスに対する細胞性免疫応答が紅斑,水疱,膿疱を発症させる。細胞性免疫応答の時間経過については,ツベルクリン反応や漆かぶれの経過が参考になる。抗原と接触後,5~6時間から発赤が始まり,48~72時間に炎症のピークが来て1週間続く。抗原との1回の接触のみで発赤腫脹は1週間続く。通常の帯状疱疹では,水痘帯状疱疹ウイルス感染細胞に対する細胞性免疫応答により炎症が誘導され,紅斑・水疱が形成され,皮疹の発赤消失までに約3週間の経過をたどる。COVID-19肺炎も,SARS-CoV-2感染細胞に対する細胞性免疫応答により炎症・すりガラス陰影等の炎症像を呈する。すりガラス陰影等が帯状疱疹での炎症像・発赤に相当すると考え,帯状疱疹の抗ウイルス薬の効果と治癒過程を参考にすると,COVID-19に対するファビピラビルの効果とCOVID-19肺炎の治癒過程の理解ができる。

図3は感染細胞の集団を示している。周辺の細胞は感染して早期であるので,抗ウイルス薬に感受性が良くウイルス増殖は停止する9)。4~5時間ほどするとウイルス核酸が合成されているので,抗ウイルス薬は効きにくくなり,10時間以降は抗ウイルス薬が効かないだけでなく,死滅せずにウイルス産生を続けて細胞性免疫を刺激し続ける。

図4のように,帯状疱疹では,抗ウイルス薬治療開始後も3~5日は細胞性免疫応答による局所病変の悪化を認め,新生皮疹は4日まで生じる。この症例では,抗ウイルス薬投与開始後に新生皮疹はなく,水疱形成に進展していないので著効である。漆かぶれの様に一度細胞性免疫応答が始まってしまうと,紅斑の中心部の発赤や腫脹が3~5日間増強するように,抗ウイルス薬では既存の感染細胞に対する炎症の増強を止めることができない。このように,帯状疱疹はウイルス増殖が関与する期間と,生存する感染細胞に対する細胞性免疫応答による炎症の期間があり,皮疹の発赤消失までの期間は約3週間となる。

図4の帯状疱疹の治療経過を見て,抗ウイルス薬投与を開始しても発疹の発赤や腫脹などは増悪しているので,抗ウイルス薬が効いていないと感じる人がいても当然と思う。しかし,個々の病変の炎症悪化は抗ウイルス薬の影響ではなく,感染細胞に対する細胞性免疫応答による炎症であることを理解すると,COVID-19肺炎に対するファビピラビルの効果が理解できる。すなわち,ファビピラビル治療を始めてから,3~5日の経過を経て改善が認められ始める。投与直後は「即効性がない」「有効性がない」と感じるかもしれないが,これが細胞性免疫応答によって生じた疾患に対する抗ウイルス薬の効果の現れ方であり,この炎症の改善には,漆かぶれにも有効なデキサメタゾンのような抗炎症薬のほうが有効であることは理にかなっている。実際,皮膚科の先生方は,抗ヘルペス薬の効果指標を炎症の改善ではなく,新生皮疹の早期停止や水疱を形成しないなどの軽症化としている。


つまり,COVID-19肺炎にファビピラビルを使用するとウイルスに著効でも,炎症には即効性は期待できないことと,治療を開始しても数日の炎症像の悪化は避けがたいと理解していただくことが必要と思われる。また,感染して10時間以降の細胞ではウイルスRNA生産を終えているので,RNA合成阻害薬であるファビピラビルは有効ではない。ファビピラビルは,このような細胞群の周囲にあるRNA合成前の細胞にのみ有効で,感染の広がりを止めるだけである。したがって,ファビピラビルは早期に使用して,大きな炎症(肺炎)を起こさせないようにしないと3週間の罹病期間は短縮できない。


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4-4に続く



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